HOME 学術フロンティア推進事業について プロジェクト紹介 活動報告 1998-2002年度活動報告


プロジェクト紹介

Ⅰ日欧比較演劇研究
演劇博物館研究
日本におけるオペラ受容史-江戸、明治、大正時代
劇場運営に関する基礎的研究
欧米・日本映画における「演技」に関する比較研究

Ⅱ日亜比較演劇研究
中国民間芸術研究会
散楽の源流と中国の諸演劇・芸能・民間儀礼に見られるその影響に関する研究
演劇を記録する―その方法論に関する比較研究
文明戯研究-中国早期話劇と周辺諸ジャンルに関して

Ⅲ日本古典演劇研究-テキストと画像
能楽に関する総合的研究
役者絵の総合的分析研究
義太夫節正本研究会
近現代芸能の資料保存
歌舞伎台本の研究 ―大坂の歌舞伎と義太夫狂言を中心に
歌舞伎番付集成の基礎的研究
本庄市周辺の民俗芸能調査

Ⅳ日本演劇の近代化に関する研究
劇評にみる坪内逍遥上演作品の演技演出評価の変遷
三村竹清日記研究
三田村鳶魚遺稿「明治・大正人物月旦」の研究
早稲田大学演劇博物館所蔵三田村鳶魚旧蔵資料の研究
古典演劇の近代


 HOME > プロジェクト紹介

PROJECT-プロジェクト紹介

●プロジェクトの紹介と活動内容

【本研究の目的】テキスト・画像・演技・劇環境等々の演劇のあらゆる要素を、比較演劇学の立場から研究することにより、日本演劇を世界の演劇史の中に位置付ける。文学・歴史研究に偏りがちであった従来の演劇研究に新しい研究方法を導入し、演劇とは何かを追究する。

【本年度の目標】役者絵研究と京劇研究とが昨年度でほぼ完成し、研究成果も公刊されたため、今年度は新たに複数の研究計画を加えた。すなわち、テキストと画像というテーマで行われている従来の研究に加え、昨年度から開始した坪内逍遙研究をさらに拡充し、西洋演劇との出会いという視点から、近代日本古典演劇に関する諸研究を位置づけた。また劇場環境や演劇資料展示方法に関する日欧・日亜比較研究、映画に関する日米比較研究も開始した。別に民俗芸能研究も新たに加えた。なお、2006年10月に成果発表会の開催を予定している。


Ⅰ 日欧比較演劇研究
プロジェクト名 活動内容

演劇博物館研究(G01)

こんにち、多くの美術館・博物館において――演劇に関するものにかぎらず――資料(コレクション)をいかに保存するかということに加えて、それらを外部の人間にいかに利用してもらうかについての関心が高まっている。誰のどのような目的に供するのか、短期的・長期的な視点に立ってどのような利用が検討されるべきなのか。そして、そのためにはどのような資料や情報へのアクセス方法を提供し(たとえばデータベースや資料のデジタル化など)、さらにはそれらを媒介として、どのようなレベルで各施設・団体とのリンクないしコラボレーションを形成していくことが可能なのか。本分科会ではこれらの問題を追究する。
こうした問題の追究は、演劇博物館の場合、その資料や情報の多様性のために、他の博物館と比べて複雑で困難ではあるが、絵画や彫刻などと異なり、対象が演劇という動的なものであるがゆえに、よりダイナミックな展開の可能性を秘めている。だがその一方、「現在行われている演劇に関する資料を保存する」という意識は未だ一般的ではなく、また、多くの資料が、十分に公開され、利用され、相互に活用されているとは言いがたい。とりわけ日本の場合、学校や企業、民間団体(劇団や興行会社)を中心に資料が保有されているという現状も影響している。

日本におけるオペラ受容史-江戸、明治、大正時代-(G10)

昨年度前半は大正時代に重点を置き、帝劇オペラの訳詞者である小林愛雄、帝劇のオッフェンバック、スッペの受容について研究発表を行ったが、その際オペレッタの原点を探求する必要性を感じたため、後半からはオペレッタ全般およびウイーン・オペレッタについての研究を始めた。本年度はさらにこれらを深めるとともに、明治、大正、昭和初期における日本独特の受容の状況、浅草オペラに見られるような大衆文化との関連性などについて研究を深めて行く。

劇場運営に関する基礎的研究(G06)

劇場運営の研究を通じて、演劇の現場と研究者との連携を図ることを目的とする。それによって理論研究と実技研究との接点を見出し、両者がバランス良く統合された演劇研究のあり方を模索したい。将来的には、国公立の劇場との共同研究プロジェクトをも目指す。本研究は、本年度で終了する21COE事業芸術文化環境研究の後継研究の実施に先立つ、準備研究として位置付ける。

欧米・日本映画における「演技」に関する比較研究(G07)

本研究は、我々の判断や認識の枠組みにまで深く影響を及ぼす映画の特質を、欧米映画、日本映画における俳優の「演技」の比較によって検討するものである。
本年度は特に、ヒッチコック映画とフランス・ヌーヴェル・ヴァーグ作品における俳優の「演技」の比較を行う。ヒッチコック映画では、いっけんすると気付かれないような俳優の演技に実は仕掛けがあり、その仕掛けこそがサスペンスを高めている。他方、ヌーヴェル・ヴァーグは、ヒッチコック映画に強く影響を受けながらもそれとは違う道を模索する。特にゴダール作品では、俳優/役柄/観客の枠組みそのものが解体されるまでに到る。演技という比較項を導入することによって、映画史における古典期から現代期への移行を考える上で重要な、ヒッチコック映画とヌーヴェル・ヴァーグの関係の内実が、より具体的なレベルで明らかとなるだろう。
本年度は、主に欧米の映画に考察の焦点を絞ることになるが、次年度以降は、日本映画との比較も視野に入れる。伝統演劇(とりわけ歌舞伎、新派)から多くを摂取することによって発展してきた日本映画の演技と、欧米映画のそれとの違いを検討することとなるであろう。


Ⅱ 日亜比較演劇研究
プロジェクト名 活動内容

中国民間芸術研究会(G09)

中国民間のパフォーマンス芸術を調査・収集し、演劇情報として記録・整理を行いつつ、現代中国におけるフィールド調査方法の問題点についても研究者間で意見交換を行う。これまでに四川省川劇学学会、四川大学博物館、貴州民族学院西南儺文化研究所といった機関と国際共同研究を行い収集した多くの演劇映像資料を整理する作業を進めるとともに、当面は特に「影戯」について、各地の分布を確認し、また新たな研究者間のネットワークを構築する。本年度は特に、湖南省衡山地区において現地研究者と国際共同研究を開始する。

散楽の源流と中国の諸演劇・芸能・民間儀礼に見られるその影響に関する研究(G08)

本研究は、具体的には能楽の直接の源流である散楽が、直接的には中国から渡来した芸能であったろうことを踏まえ、古代中国世界において、日本で「散楽」と呼ばれた芸能が、どのような歴史と地域展開を有していたか、日中両国での時間的変容をおさえ、自国化するにおいて変化した部分と変化しない部分を洗い出し、不可変部分に国を越えたアジア的、あるいは世界的要素がないかを検証することで、12?13世紀以前からの日中の比較演劇史研究に、新しい方法を開拓することを目標とする。
05年度の研究活動で中国の散楽の基層にユーラシア大陸の雑技・音楽・舞踊などがあることが見えて来た。これに基づき、本年度は中国を中心とするユーラシア大陸の芸能という枠組を想定して研究活動を行なう。12月には演博演劇研究センターCOE21世紀プログラムと共催で国際シンポジウム「散楽の国際性(仮)」を開催、本プロジェクトのメンバーほか、ユーラシア大陸各地の芸能研究者が集い、従来なかったこの枠組での研究の可能性や問題点について討議、検討する。

演劇を記録する―その方法論に関する比較研究(G03)

時間芸術の中でも、演劇は、一回性と共時性に支えられた表現形式であるため、上演そのものを記録・保存することは不可能に近い。しかしその一方で、演劇史とはそのまま記録・保存された演劇の蓄積とも考えられる。演劇人たちは上演の記録にどのように取り組んできたのか、あるいは取り組んでこなかったのか。また、それらの取り組みには、文化や地域等によってどのような差異が認められるのか。そして、演劇・映像を記録するということはどのような問題を孕んでいるのか。
本研究は、演劇博物館助手、元助手である研究参加者の専門の多様性を生かした研究を行うことを目的とする。さらに、本年度より映像分野からの視点を研究に取り入れ、映像に記録された「演技」に注目することによって、より多角的な研究を目指す。
文明戯研究-中国早期話劇と周辺諸ジャンルに関して 1:中国における伝統演劇(戯曲)と近現代演劇(話劇)の過渡的形態である文明戯(中国早期話劇)の形成過程を、日本で創設された春柳社を中心に、日本演劇との関わりを視野に入れつつ分析する。
2:文明戯の実相を、二十世紀十年代の全盛期、二十年代以降の衰退期、五十・六十年代の一定の復興期(通俗話劇・方言話劇期)を通して解明する。
3:文明戯が伝統演劇・映画に与えた影響を解明する。

Ⅲ 日本古典演劇研究―テキストと画像
プロジェクト名 活動内容

能楽に関する総合的研究(G11)

本年度は、能楽囃子研究の成果として「川崎九淵コレクション」の所蔵目録データベースの公開を目標としたい。本研究では、これまで月例の研究会を開催し、主として川崎九淵によって記入された手付の調査を行ってきた。これらの成果を盛り込むことで、能楽の実技研究に有益な情報を提供できる。また、継続して実施している大鼓手付の研究も続行する予定である。
また、昨年度は、新潟市大鹿の吉田文庫所蔵資料の調査を行った。吉田文庫は、近代能楽研究の嚆矢として知られ、早稲田大学教授でもあった吉田東伍博士の旧蔵資料を所蔵しており、本調査は吉田文庫所蔵資料の悉皆調査を行うものである。昨年度は、芸能、歴史関係の書籍、及び書状の調査を行ったが、本年度も継続して調査を行う予定である。本年度中に調査の大半を終了し、所蔵目録作成作業へと移行したい。
さらに、謡曲の本文研究については、勉誠出版より逐次刊行予定の『新編謡曲大観』について、各研究者の分担を決定し、現在作業を行っている最中である。また、現代演劇としての能楽研究については、昨年度以来、海外からの留学生を中心に研究会を組織し、各人のテーマに基づいた研究活動を実施している。

役者絵の総合的分析研究(G14)

本プロジェクトでは、現在世界に誇る演劇博物館「浮世絵閲覧システム」の基礎データの検討と蓄積を行っているプロジェクトである。研究成果は、WEB上で公開されている浮世絵閲覧システムのなかで、常時発信されており、ここ数年で世界的に広く知られるようになり、国内外での評価が極めて高い。本プロジェクトでは、こうした基礎的なデータ蓄積作業に加え、役者絵の演劇研究上での価値や意義、その研究手法の論文化や研究ツールの発信を目指している。今年度は、昨年度に引続き、関係資料所蔵機関調査(京都府内の所蔵機関を予定)、原稿化のための研究発表、他機関からの役者絵考証受託研究などを行なう。また、これまで通り、定期的な研究会を通じて、演劇博物館所蔵浮世絵の整理、公開データベースの情報充実等を継続して行なう。2006年度は、とくにこれまで10年に亙り対象としてきた初代豊国に加え、初代国貞の考証を開始する。これにより、文化文政・天保期の役者絵の全体像がいよいよあきらかにされることになる。

義太夫節正本研究会(G04)

本研究会は、従来未翻刻の義太夫節浄瑠璃作品を網羅的に翻刻活字化し、演劇・文学・国語学の研究者のみならず、芸能の実践者をはじめ、愛好する人々に良質の本文を供し、広く日本の文化に貢献することを目的とする。発足以来8年余の間、①翻刻底本の選定と、②読み易い翻刻の形について、研究を続けてきた。本年度はその成果として、「義太夫節浄瑠璃未翻刻作品集成」第1期12巻のうち、第1巻「出世握虎稚物語」から第6巻「清和源氏十五段」までの6冊を玉川大学出版部より刊行予定である(第1~3巻は5月迄に刊行済)。第1期分の刊行を遅滞なく行うとともに、第2期を視野に入れ、作品選定のための浄瑠璃正本資料収集と諸本調査、及び翻刻作業を進める。

近現代芸能の資料保存(G05)

中村芝翫家、市川猿之助家等に所蔵される映像記録の整理・デジタル化の実績を踏まえ、さらなる資料の捜索と、周辺資料の整理を進める。
 さらに、演出資料として、演劇博物館に収蔵・寄託されている歌舞伎俳優の書抜類の整理と撮影を進める予定である。書抜類には、台本や道具指定の資料が添付されていることがわかっているので、それらを含め、書抜の資料的価値について、研究を進める予定である。
歌舞伎台本の研究 ―大坂の歌舞伎と義太夫狂言を中心に 18世紀後半から19世紀前半にかけて、義太夫狂言ならびに大坂で上演された歌舞伎の台本は、現在の歌舞伎の原点となるものである。本研究は昨年の調査研究結果を踏まえ、引き続きこの時代に焦点を当てて、歌舞伎台本の調査を行い、その内容の分析研究を遂行したい。
歌舞伎番付集成の基礎的研究 江戸時代の歌舞伎番付は顔見世番付・辻番付・役割番付・絵本番付など複数の種類に分けられ、同一の興行に際しても、各種の番付ごとに多数の異版が板行されており、その関係はきわめて錯綜していて、番付年表を作成することすら容易でない。演劇博物館にも多数の番付が所蔵されているが、全体像からみれば氷山の一角といえ、多数の所蔵機関に分散されている番付を集めて比較することが、番付研究の第一歩となる。本研究ではその基礎的な作業を行うことを目的とする。
本庄市周辺の民俗芸能調査 本庄市周辺には、神楽、三匹獅子、山車(囃子)などの多彩な芸能が伝承されているが、人口減少の続く現在では、次第に実施が困難になっている地域も増えている。こうした芸能について、現段階で映像・音声記録や聞き書きを作成して将来に残すとともに、すでに行われなくなった芸能についても、その道具等の撮影、古老からの聞き書きなどによって、できる限り実態を明らかにして、この地域の芸能分布の輪郭を明確にするのがこの研究の目的である。

Ⅳ 日本演劇の近代化に関する研究
プロジェクト名 活動内容

劇評にみる坪内逍遥上演作品の演技演出評価の変遷(G15)

昨年に引き続き、逍遙作「桐一葉」をとりあげる。各々が分担した方向に沿って資料収集し、同作品の多面的な研究が成立するよう努める。

三村竹清日記研究(G13)

当研究会は、三村竹清の日記「不秋草堂日暦」(明治末~昭和20年代)を翻刻し、併せて竹清の業績を研究し、世に紹介するために、1990年に発足した。三村竹清(1876~1950)は、書・篆刻・古典籍・近世文芸・地誌・民俗等に通じた研究家であり、また当時の多くの考証家とも交流を持った高尚な趣味人でもある。演劇博物館所蔵の日記は明治43年から昭和28年まで、全145冊に及び、内容は深い学識に裏付けられ、周辺の人々の動静も知ることの出来る貴重な資料である。
昨年度に引き続き、今年度も竹清日記の翻刻公開作業と、竹清に関する文献の収集、刊行への準備につとめる。

三田村鳶魚遺稿「明治・大正人物月旦」の研究(G12)

三田村鳶魚(1870-1952)の江戸研究の基礎は広範な資料の精査収集と共に、実地踏査と当時生存の関係者の聞き取り調査にある。鳶魚は最晩年の昭和23,4年以降、これまで接した人々の追憶、印象、批評を思い出すまま書き綴った。現在その原稿は推定360枚余、挙げられた人物は広く政治経済界、文芸、芸術界、95名に及ぶ。長文、短文とりどりながら、鳶魚の鋭い観察眼により、その裏面、側面を描き、特異な人物評論となっている。
その三田村鳶魚遺稿「明治・大正 人物月旦」の原稿360枚は、昨年度をもって、翻字、パソコン入力はほぼ終了した。本年度の研究目標は、本資料の研究段階に入り、鳶魚の俎上に挙げられた人物の調査研究と共に、事象、時代背景等を合せて調査する。

早稲田大学演劇博物館所蔵三田村鳶魚旧蔵資料の研究(G02)

鳶魚旧蔵「含苞」の再編・DB化と、冊子体での索引作成。
古典演劇の近代 明治維新直後の古典劇、とくに能と歌舞伎に関する、西洋演劇の影響を中心に、日本古典演劇がどのようにして「近代化」を遂げたのかを、輪番形式の研究会により、それぞれの立場から考察する。堤氏は先頃提出した学位論文を、ペトル・ホリー氏は南北の歌舞伎作品を、李墨氏は日中比較演劇研究の立場から中国演劇の近代化の問題をも、それぞれ主要テーマとし、歌舞伎を対象とした近代化の研究を行う。竹本・田村・マートライは、能楽の近代化の問題を中心に考察する。日本演劇に与えた西洋演劇の影響の考察は、非ヨーロッパ世界における類似事例の研究のモデルケースとなろう。



pagetop
早稲田大学演劇博物館 日亜・日欧比較演劇総合研究プロジェクト
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1 TEL.03-5286-1829
Copyright 2004 The Tsubouchi Memorial Theatre Museum, all rights reserved
日亜・日欧比較演劇総合研究プロジェクト お問い合せ