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■プロジェクト紹介
Ⅰ日欧比較演劇研究
├演劇博物館研究
├日本におけるオペラ受容史-江戸、明治、大正時代
├劇場運営に関する基礎的研究
└欧米・日本映画における「演技」に関する比較研究
Ⅱ日亜比較演劇研究
├中国民間芸術研究会
├散楽の源流と中国の諸演劇・芸能・民間儀礼に見られるその影響に関する研究
├演劇を記録する―その方法論に関する比較研究
└文明戯研究-中国早期話劇と周辺諸ジャンルに関して
Ⅲ日本古典演劇研究-テキストと画像
├能楽に関する総合的研究
├役者絵の総合的分析研究
├義太夫節正本研究会
├近現代芸能の資料保存
├歌舞伎台本の研究 ―大坂の歌舞伎と義太夫狂言を中心に
├歌舞伎番付集成の基礎的研究
└本庄市周辺の民俗芸能調査
Ⅳ日本演劇の近代化に関する研究
├劇評にみる坪内逍遥上演作品の演技演出評価の変遷
├三村竹清日記研究
├三田村鳶魚遺稿「明治・大正人物月旦」の研究
├早稲田大学演劇博物館所蔵三田村鳶魚旧蔵資料の研究
└古典演劇の近代
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演劇博物館研究 |
●代表者名
秋葉裕一
●研究組織
所属 |
資格 |
氏名 |
演劇博物館 |
副館長 |
秋葉裕一 |
演劇博物館
早稲田大学教育学部
早稲田大学
演劇博物館
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館長
非常勤講師
職員
助手 |
竹本幹夫
八木雅子
山本浩幾
萩原 健 |
●2006年度の研究内容
こんにち、多くの美術館・博物館において――演劇に関するものにかぎらず――資料(コレクション)をいかに保存するかということに加えて、それらを外部の人間にいかに利用してもらうかについての関心が高まっている。誰のどのような目的に供するのか、短期的・長期的な視点に立ってどのような利用が検討されるべきなのか。そして、そのためにはどのような資料や情報へのアクセス方法を提供し(たとえばデータベースや資料のデジタル化など)、さらにはそれらを媒介として、どのようなレベルで各施設・団体とのリンクないしコラボレーションを形成していくことが可能なのか。本分科会ではこれらの問題を追究する。
こうした問題の追究は、演劇博物館の場合、その資料や情報の多様性のために、他の博物館と比べて複雑で困難ではあるが、絵画や彫刻などと異なり、対象が演劇という動的なものであるがゆえに、よりダイナミックな展開の可能性を秘めている。だがその一方、「現在行われている演劇に関する資料を保存する」という意識は未だ一般的ではなく、また、多くの資料が、十分に公開され、利用され、相互に活用されているとは言いがたい。とりわけ日本の場合、学校や企業、民間団体(劇団や興行会社)を中心に資料が保有されているという現状も影響している。
●2006年度の具体的な研究計画
具体的な研究の方向としては大きく二つある。第一には、研究会を企画し、演劇関係資料を持つ施設(松竹、池田文庫、国立劇場、新国立劇場、各能楽堂、日大図書館、ポスターハリスカンパニーなど)からゲストスピーカーを招き、日本における演劇資料の状況やそれぞれの施設の役割、アーカイブ化に関する共通の認識、今後の展望について検討する(あるいは演劇関連ではない美術館やアーカイブの専門家の話を聞く機会も有意義かもしれない)。図書館と美術館との資料に対する考え方の違い(データの持ち方や公開・利用の仕方)を埋めていこうとする動きがあるが、これは演劇資料に関しては、むしろその両方を持つことが一般的なので、すでに当然のこととして解決されている問題もあれば、そこから学ぶべき多くの点もあるだろう。なお、こうした講演会(あるいは研究会やシンポジウム)はテープに記録し、これを文章に起こしたものも何らかの形で公にしたい。
第二には世界各国の演劇博物館との連携および情報交換である。早大演博の活動について、また社会におけるその役割について、海外へ情報発信していくとともに、各国の演劇博物館のあり方に関する情報を収集し(資料など)、そして各博物館との意見交換も行いたい。本年度の具体的な活動としては、8月末にオーストリア・ウィーンで開催されるSIBMAS(国際演劇図書館・博物館連盟)2006年会議に参加し、活動報告を行い、ここで各国の演劇博物館とコンタクトを結び、今後の活動の布石とする。
2006年度活動報告 |
2006年は、当プロジェクトにとって、飛躍の年であった。まず、特筆に価するのは、早稲田大学演劇博物館(以下、演博)がSIBMAS(国際演劇図書館博物館連盟)に加盟し、8月のウィーン会議に萩原、八木、山本の三名を代表として派遣できたこと。そして、演博の歴史や施設の概要、事業内容について報告し、他の国々の演劇博物館・資料館関係者と直接に情報交換をはかれたことである。SIBMASは世界にネットワークを広げており、海外の演劇博物館と積極的に提携交流を進めていくためには、現時点でもっとも重要な組織と目される。とはいえ、SIBMASもヨーロッパ中心であることは否めず、将来にわたってアジアや他の地域の演劇博物館との連携を強めようと望んでいる。初参加にもかかわらず、萩原が次回グラスゴー大会の実行委員に選出された事実は、その期待を示すものであろう。博物館連携の拠点と結びつくことで、当研究プロジェクト「演劇博物館研究」も、情報交換やアーカイブ構築の充実をはかる筋道が示され、演劇博物館を考察する条件や基礎資料を得たと言える。一方、本年度は21世紀COE事業の最終年度に当たり、その事業展開と絡ませながら、海外の演劇人・演劇博物館との交流を積極的に行うことで、本テーマの対象とするところを深めることもできた。
研究成果の発表
Ken Hagiwara/Masako Yagi: An Introduction to the Tsubouchi
Memorial Theatre Museum at Waseda University, Tokyo/Japan
[at the SIBMAS-Congress 2006 in Vienna/Austria, 29.8.2006]
山本浩幾 「演劇博物館の公開データベース」 『演劇博物館館報』95号 2006年9月 42~44ページ
秋葉裕一(共著)『演劇学のキーワーズ』(佐和田敬司/藤井慎太郎/冬木ひろみ/丸本隆/八木斉子編著) 「演劇博物館」の項 ぺりかん社 2007年3月 255~259ページ
萩原健 「世界の演劇博物館⑨ SIBMAS(国際演劇図書館博物館連盟)とオーストリア演劇博物館(ウィーン)」 『早稲田大学坪内博士記念演劇博物館』96号 2007年3月 38~41ページ
山本浩幾 「SIBMAS(国際演劇図書館博物館連盟)2006 年ウィーン会議出席報告」 『アート・ドキュメンテーション通信』72号 アート・ドキュメンテーション学会 2007年1月
山本浩幾 「浮世絵閲覧システムについて」 『科学』77号 No.4 2007年4月(予定) 岩波書店 |
プロジェクト研究成果概要
欧州における演劇博物館 ベルギーにおける演劇博物館と情報ネットワーク |
本プロジェクト「演劇博物館研究」は、演劇に関する資料や情報を収集・所蔵・公開する国内外の専門施設を比較研究し、その機能と役割を今日的・将来的な展望に立って考察し、またそうした国内外の諸施設との情報交換によって、演劇博物館が抱える問題を認識・共有すること、またそれら諸施設の活動を一般に広く知らしめることを目的として活動してきた。また2007年度より、上演資料をもとに作成される上演記録情報管理の統合的構造化を目的とするプロジェクト「演劇博物館資料研究」を吸収し、新たな活動として、海外の演劇博物館・図書館でも中心的な関心事である資料の情報化とその管理・公開に関する調査・研究が加わった。
国外演劇博物館の実地調査としては、BnF付属舞台芸術部門他2施設(仏)、王立モネ劇場アーカイブ他4施設(ベルギー)、オーストリア演劇博物館、ハノーファー演劇博物館(独)でこれを行い、演劇博物館館報での連載「世界の演劇博物館」にこれを反映させた。同連載ではプロジェクトメンバー以外の研究者にも調査を委託し、ストラットフォード・アポン・エイヴォン(英)、NY舞台芸術図書館(米)に加え、ロシア 国立中央バフルーシン演劇博物館、モンゴル国立演劇博物館、山西師範大学戯曲文物研究所戯曲博物館(中国)、北京人芸戯劇博物館を取り上げた。
この5年間の活動の中で最も注目すべきは、早大演劇博物館(以下「演博」)のSIBMAS(国際演劇図書館博物館連盟)への加盟(2006年)および同国際会議(同年8月、ウィーン)での発表(萩原、八木、山本)である。SIMBASは欧州を中心としながらも世界に広がるネットワークを持つ重要な組織であり、また隔年で行われる国際会議では、直接的・積極的な情報交換と人的交流が図られる。この席で演博の歴史や施設・活動について報告できたこと、更に萩原が08年グラスゴー大会の実行委員に選出されたことの意義は大きい。SIBMASにおける演博のプレゼンスが高められ、情報交換やアーカイブ構築の充実を図る一つの筋道が示され、演博とSIMBAS加盟団体双方にとって新たなネットワーク作りへの道が開かれた。演劇博物館の抱える問題や取り組むべき課題には共通するものが多く、情報化において世界的な標準を意識せざるを得ない状況の中で、相互交流のための基盤が確立できた。
発表
- Ken Hagiwara/Masako Yagi: An Introduction to the Tsubouchi Memorial Theatre Museum at Waseda University, Tokyo/Japan [at the SIBMAS-Congress 2006 in Vienna/Austria, 29.8.2006]
論文・報告
- Ken Hagiwara/Masako Yagi: An Introduction to the Tsubouchi Memorial Theatre Museum at Waseda University, Performing Arts Collections on the Offensive/ Les collections d’arts du spectacle passent à l’offensive, 26th SIBMAS Congress, Vienna 2006, eds. Ulrike Dembski, Christiane Mühlegger-Henhapel,Schriftenreihe des Österreichischen Theatermuseums, Peter Lang, 2007, p. 113-117
- 「研究活動報告 私立大学等学術研究高等化推進事業 学術フロンティア事業 早稲田パートナーシップコーナー、そして研究集会―マイニンゲン・ライプツィヒ紀行―」[『演劇博物館』92号(2005.3)、44~48頁]
- 秋葉裕一「演劇博物館」[佐和田敬司/藤井慎太郎/冬木ひろみ/丸本隆/八木斉子編著『演劇学のキーワーズ』(ぺりかん社)2007、255~259頁]
- 萩原健 「世界の演劇博物館⑨ SIBMAS(国際演劇図書館博物館連盟)とオーストリア演劇博物館(ウィーン)」[『演劇博物館』96号(2007.3)、38~41頁]
同「世界の演劇博物館⑪ ハノーファー演劇博物館」[『演劇博物館』98号(2008.3)]
- 八木雅子「世界の演劇博物館④コメディ=フランセーズ図書博物館」[『演劇博物館』90号(2004.3)
- 山本浩幾「演劇博物館の公開データベース」[『演劇博物館』95号(2006.9)、42~44頁]
同「SIBMAS(国際演劇図書館博物館連盟)2006 年ウィーン会議出席報告」 [アート・ドキュメンテーション学会『アート・ドキュメンテーション通信』72号(2007.1)]
同「浮世絵閲覧システムについて」[岩波書店『科学』、77号、No.4(2007.4)]
同「占領期九州地区検閲台本群―ダイザー・コレクション―の再整理と公開」[「特集:コレクションの構築と運営」社団法人情報科学技術協会『情報の科学と技術』Vol.57, 2007, No.12, 567~574頁]
論文一覧
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